水素を体に取り入れることで健康を増進したり、一部の病気の治療に用いる方法が研究されています。
気体の水素(H2)を吸入するだけでなく、点滴を用いて血液中に投与する方法が水素点滴療法です。
これは、3%の濃度の過酸化水素(H2O2)を5%のブドウ糖液を混ぜた点滴液を静脈から投与する方法です。
一般的に過酸化水素は外傷の際に化膿を防ぐために用いられる殺菌剤ですが、
点滴で投与することで体内で無害な水(H2O)と水素(H2)に分解されます。
水素は、人体に有害な活性酸素と結合して無害化させる働きがあります。
ちなみに活性酸素が体内で過剰に生成されると血中コレステロールを酸化されて
動脈硬化を引き起こしたり、正常な細胞やDNAを破壊するといった危険性があります。
体内の正常な細胞を酸化して破壊する作用があることから、近年では
活性酸素が疲労や老化の原因物質のひとつである可能性が指摘されています。
水素点滴を用いて体内に水素を導入することで、成人病や老化を防ぐ働きが期待されます。
点滴の方法ですが、慢性疾患の場合は1週間に1回程度のペースで実施します。
細菌やウイルス感染症などの急性疾患であれば、症状が改善するまでの間は1日1回のペースで点滴が行われます。
近年になって健康増進や病気予防のために水素水を飲む方法が注目を集めていますが、
水素を用いた病気の治療の研究は20世紀初頭からすでに始まっていました。
1920年にインフルエンザ患者に対して治療が行われて一定の効果が確認され、
1960年代以降になると米国でがん治療を目的とした研究も始まりました。
1990年代にはいるとCharles H. Farrが水素点滴について本格的に研究を行い、
医学的・化学的に効果があることが示されています。
Charles H. Farrは多くの学術論文や文献を通して水素点滴の効果を発表し、
1993年にノーベル医学賞にノミネートされたほどです。
これらの研究によって水素を用いた治療やアンチエイジングが世界的に注目を集めるようになり、
高濃度ビタミンC療法などと併用してがんの治療などに応用されています。
現在も過酸化水素を用いた水素点滴は国内の複数の病院・クリニックで行われており、
病気の治療や美容・疲労回復などの目的で実施されています。
2020年時点で水素点滴は健康保険が適用されませんが、使用される薬剤は
すべて厚生省に認可されているものなので安全性については問題ありません。